| 拝啓 菊花賞も終わり、ちょっぴり冬の寒さが感じられるようになりましたね。静内の丘はどんな風ですか?
思い起こせば、君と初めて出会ったのは中山競馬場だったね。あれはミモザ賞、まだ400万下なんていう条件だったっけか(笑)。今聞くとなんだか笑っちゃうね、400万条件。もうずーっと前のことなんだね。君はあの時、2番人気に推されていたんだよ。パドックでとびっきりピカピカの馬体をみんなに見せて・・・、でも11着(苦笑)。もちろん馬券は外したよ。君から買ってたんだもん。でもさ、そん時から僕は君に首ったけになったんだ。
それから新潟、函館、福島。すこし休んで東京、福島、函館、中山。また一休みして東京、福島、函館。ずっとテレビの中の君を追いかけてた。いくつかの戦いはラジオだったかもしれない。でもラジオから聞こえてくるのは音だけなのに、君の走りは何故か目に浮かんだんだ。とびっきりの尾花栗毛の姿から、まるで金色の何かを振りまくようにターフを駈ける姿が見えたんだ。
次に逢えたのはその後の東京競馬場、東京スポーツ杯だったね。初めて出会った頃の幼かった姿が、綺麗なまま、サラブレッドに変わっていたよ。“金色のサラブレッド”僕は本当にそう思ったんだ。加藤和宏騎手を背に真っ先にゴールに飛び込んだ君に、バカでっかい声で“ファルコ!”って叫んだの、聞こえてたかなぁ?でもあの頃には君のファンはスゴク増えていて、皆が叫んでいたからわからなかったよね。アルゼンチン共和国杯、フェアウェル・ステークス、そして初重賞勝利になった金杯。テレビで見ていたんだ。だからこそ次のレースは行こうって。そしてAJCC。目の前で勝って見せてくれたね。すっごい嬉しかったよ。
あのあと、ちょうどこの季節までお休みした君が、復帰戦として出走したのは天皇賞(秋)だったんだよね。AJCCを勝ったあと、裂蹄から脚を痛めて、春の盾をあきらめて、秋へ・・・。でも骨折そして引退。競馬場で君をもう見ることは出来ないんだって思ったら、なんだかとっても悲しかったんだ。
ところが、競馬の神様はにっこりと微笑んでくれたんだね。君は府中に帰ってきた。誘導馬として。役目は変わったかもしれないけど、僕は、いや僕らはホントに嬉しかったんだよ。誘導馬になってからも、君の人気は衰えなかったね。みんなが「ファルコ」って呼んで、カメラのシャッターを切っていたね。ダービーの日、僕も君の姿をファインダーにおさめたんだよ。脚を痛めて誘導馬を引退するまでの4年間、僕は東京競馬場へ行くといつも君の姿を探してた。そういえば君の引退式にはいけなかったんだよね。あの時はごめんなさい。誘導馬の引退式って聞いたときはちょっと驚いたけど、君の人気を考えれば当たり前だよね。
競馬場を出た後、君に会いに行ったのは読売ランドだった。JRAのホース・フェスティバルって名づけられたイベント。初めて君とツーショットで写真とったんだよね。あの写真、君には渡せなかったけど、今でも僕の部屋のコルクボードに貼ってあるんだよ。大事に大事にしてるよ。
そう、あれが最後だったね。あれから馬事公苑に何度か行こうと思ってた。でも、行けなかった。忙しいって理由をつけてた。今更ながら思っているよ。無理にでも行けばよかったって。もう一度、もう一度、金色の君に会いに行けばよかった。本当にそう思っているよ。
ありがとう、トウショウファルコ。君の姿を、そして君の名を僕は忘れない。君の名を、そして姿を知る者は、きっと誰も忘れることはできないさ。きっと忘れられないはずだよ。だからありがとう、ありがとう。
敬具
追記
空の上の走り心地はどうだい?緑のターフの上を滑るように走る金色の君は、本当に素敵だった。でも今ごろは青い空で駈けているんだろうね。君の金色は、どこにだって映えるんだよね。だからいつか空を見上げたときに、ちょっとだけ姿を見せておくれ。
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